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中部経済新聞連載「マイウェイ」第27回

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「日本的な響き」を学ぶ

清水寺コンサート
 2005年の「愛・地球博」のキャラクター、モリゾーとキッコロのNHKアニメは、私が音楽を担当した。そんな縁で、スペイン大使館からスペインパビリオン主催の日本ならではのピアノリサイタルを望む相談を持ち掛けられた。そこで、自分が暮らす京都のお寺でリサイタルをしてみようと思い立った。
「舞台」といえば、思いついたのが清水寺だった。門前払い覚悟で思い切って清水寺の門を叩き、演奏を相談した。すると思いがけない言葉が返ってきた。「木材だけで千年以上も寺が建ち続けていられるのは、人の祈る念がその木に宿るから。清き音楽もまた、人の祈りと同じように目に見えない命となって木に宿るのであろう。自分のためではなく、人のために祈り奏でる演奏をすると約束をするのであれば許そう」。
続けて「ただし、1度限りのイベントは誰でもできる。2度目も頑張ればできる。しかし、3回以上継続することは何においても難しい。本物と言われたいのであれば、辛抱強く続けることであろう」と助言を受けた。
リサイタルは実現した。清水寺の舞台でピアノリサイタルをするのは私が初めてだった。世界遺産で国宝だらけだった。重さが500キログラム以上のグランドピアノを搬入したり天気を見極めて客席の配置を決めるのは全て手探りだった。その分、お客さんはとても喜んでくださった。
この体験で「日本的な音のあり方」という大きなテーマを与えられたと思った。清水寺コンサートは清水寺舞台の修復工事までの13年間、毎年秋の大きな恒例演奏会になった。回を重ねるたびに大きな学びを得て、少しずつ自分の演奏スタイルを見つけていった。最終的には音響機器、マイク、照明を使わずピアノ1台だけで演奏する形に行き着いた。
千年も昔の人が作り出したこの「舞台」自体が日本人の音の聞き方を教えてくれる師匠であった。東山の深い森から突き出した舞台は音舞台として完璧に設計されていて、そこの全ての音を調和させる構造になっていることを知った。虫の声、どこからか聞こえてくる修行僧のお経の声、音羽の滝の水音、木々のざわめき、風、月、星、雨…。ピアノの音はその壮大なる調和の中のごく一部であった。風の音や虫の声に耳を澄ませながら演奏をすると、舞台全体が振動して美しく響くことを学んだ。

  • 2023年04月01日(土)20時43分
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