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保山耕一さん

一年半ほど前、衝撃的な出逢いがあった。
出逢ったのは、ある一本の映像だった。
その映像を撮した人が誰なのかもよく知らないまま映像を見た瞬間、映像の中に引き込まれ自我が消え風景の一部になって行くような感覚を覚えた。その映像の中で流れている時間は、自分がピアノを弾く時の音の中に流れている時間と同じ速さで流れていて、その映像の中の色彩は、自分が音の中に見える色彩と同じだった。

保山耕一さんの映像は私にとって音楽そのものだ。
朝露の小さな丸い滴の中に地球がギュッと丸ごと凝縮され、月影の中に生命が宿り、雲の内側で何かが囁く。草も散りゆく花びらも木々も空も雨も、彼にカメラを向けられた全ての生きとし生けるものが、日頃は気取って見せてくれない素顔を「さあ見てください」と言わんばかりに開け放つのだ。
映像一つ一つの色彩がそのまま音に変換されて聴こえてくるようで、彼の映像を見ていると自分の五感のうちの聴覚と視覚が境界線を超えて一つの感覚になって行く。

1年半前、まさかその撮影者である保山さんご本人に出逢い、一緒にテレビの番組が実現するなんて夢にも思わなかった。
現在NHK奈良で毎週一度放送されている「やまとの季節 72候」は、自分にとって週に一度やってくるかけがえのない学びと発見、そして誕生の時間だ。
正直に言うと、保山さんの映像に西洋的な音楽は必要ないのではないかとすら思ってしまう。それほど彼の映すものはハーモニーに溢れていて、ちょっとでも余計な音を入れてしまうと何かが違う気がしてしまうのだ。一番最初に見た時に思った、映像の風景の中に吸い込まれ消えて風景の一部となって行く自分と同じように、耳には何も聞こえないくらいの透明な音楽、音が止むと初めて存在に気づく風や鳥の囁きのような音で寄り添えるようになれたらと願いながらピアノに向かう自分がいる。でも、まだまだ自分の力不足を感じる。

3月7日、奈良公園バスターミナルのレクチャーホールで、とうとう保山さんの映像と同時演奏で共演させてもらう事が実現する。

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  • 2020年02月20日(木)19時19分
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